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アパレル業界の洗礼を浴びたプランタン銀座での想い出

明けましておめでとうございます!買い物中毒のファション通販アドバイザーの野田(@KURUZE)です。お年玉使い果たしてますか?

さて新年一発目のブログは、大晦日に飛び込んできたこちらのニュースから。

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画像:Fashionsnap.com タイトル画像:都市商業研究所 

なんか感慨深いなぁ。というのもボクがアパレルで働き出したときに「現場の洗礼」を浴びた場所がこのプランタンでした。

今日は遠い目をしながら、そんな過去に思いを馳せてみようかと思います。一杯引っ掛けながら気楽に読んでもらえれば嬉しいっす。

 

二番店という重要拠点に配属されたのは、おっさんと元ラッパーの珍コンビ

ボクがプランタンに出店しているブランドに就職したのは今から10年近く前の30歳のときでした。それまで雑誌の編集やスニーカーの営業・企画・生産をしていたボクにとって、アパレルの会社で務めるのは初めての経験。いちおう通販を担当するということで入社したのですが、まだちゃんと組織ができているわけでもなく、なんでもやってました。

そしてその当時は、何もしないでも商品さえ作っていれば売れるという古き良き時代。なので、セールともなると会社をあげての一大イベント。本社の人間が各店にヘルプとしてセール最前線に放り出されます。通販担当として入ったボクにも容赦なく赤紙が届きます。配属先はプランタン銀座。この時入社2ヶ月でした。

当時在籍していたブランドでプランタンは、新宿ルミネに次ぐ2番店。そんな重要拠点に右も左も分からないおっさんを放り込むんだから、いかに勢いだけで売っていたか分かっていただけると思います。そしてセール本番の2日前。いよいよプランタンへ赴く日がやってきます。

この時のセールは夏のセールだったので、時期は7頭くらいだったと記憶しています。ボクに与えられた役割はストック整理。売り場から15秒ほど離れた冷房が一切ないストックルームで倉庫より届く大量のセール商品を棚に入れていきます。と書くと聞こえがいいのですが、いやいや棚が全然足りない。そもそもスペースも全然足りない。本社のやつら (=いや自分もなんだけどw ) 考えて積み込みしてんのかよ!と愚痴をこぼしながら、まずはダンボールで棚を作っていくことから始まります。

この時一緒に作業してくれたのは、そうだな〜、仮にニシくんとしましょう。彼はプランタン銀座の商品管理の担当としてほぼ同じ時期に入社した新人でした。年は5歳くらい下。店のことは彼の方が詳しいので色々聞きながら作業を進めるもど〜にも要領を得ない。いや、そもそもドモってて何を言ってるのかサッパリ聞き取れない。聞くと元ラッパー。嘘でしょ!? と思いつつも、確かにドモってれば韻踏んでるように聞こえるか、と妙に納得。

ブランド全店舗の中でも重要な売り上げを占める2番店、そこに配属されたのが30歳のおっさんと、挙動不審の元ラッパーという明らかな配置ミス。圧倒的不安の中、セール準備は進んでいくのである……。

 

本社より秘密兵器投入。いざ本番へ向かうべく準備は進む

そしてセール前日に本社から秘密兵器が投入されます。「インカム」です。店頭からスタッフの子たちがインカムでお客さんに頼まれた商品をどんどん伝えてくる。それをストックで待機するボクが棚から取り出しニシくんにパス。それをニシくんがお店までダッシュして届けるという作戦が大本営から通達されます。

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「そこまで大袈裟にすんの!」という衝撃と共に、明日訪れる本番がどれだけのものか楽しみになってきました。でも横を見るとニシくん、不安が一気に広がります。。。

そこでボクは1つ作戦を立案しました。「ストックの地図を作成しよう!」と。いきなりインカムで言われても、どこに何がしまってあるか分からない。

でも店頭からはどんどん品出しの依頼が入ると予想されたので、すぐに取り出せるよう地図を作成することに。それをストックの見える場所に貼る。完璧です。ほどなくして作業は完了。ストックされたすべての商品の品番をメモし地図が完成します。

そして練習。「野田さん、Aの15の0001のブラックをお願いします!」ニシくんが店頭からインカムで指示を出します。「了解!」とボクは地図をみて、その商品を取り出します。そして店頭から戻ってきたニシくんにパス。完璧なリレー、我ながらしてやったりです。もう明日のセールは完璧。

 

いざ本番!そしてアパレルの洗礼がっ!

セール当日の最初の仕事は弁当の買い出し。当日は食事に出る時間もないので、お店の子の分も含めて弁当の買い出しを済ませておきます。東京駅の駅弁コーナーで全国津々浦々の弁当を買って、どんな要望にも答えられるようにします。ここで変な弁当をチョイスすると総スカン。ケンタッキーを買って、血祭りにあった同僚をボクは知ってます。

そしてプランタン到着。冷房のないストックルームで1日作業なので、水分も着替えも準備して用意万全。「大丈夫!ボクらには、この地図がある!」そう心の中で呟いて、ニシくんと固い握手。

そして、いよいよ開店。ついにセールの火蓋が切って落とされました!

エスカレーターを怒涛の勢いで上がってくる奥様方。ハンパじゃない!テレビで見るバーゲン会場の様子がすぐに眼下に広がります。ボクもすぐに所定位置に戻り待機。ほどなくしてお店のスタッフからインカムで指示がきます。

お店の子:「Vネックなんたらかんちゃらの黒!」

ボク:「へ!? ごめん!よく聞き取れない。もう一回!」

お店の子:「Vネックなんたらかんちゃらの黒!」

へ?Vネックなんたらかんちゃらって。。。あの〜品番は。。。

そう本社で普段あまり商品と触れないボクらは、商品を見分ける時「品番」で管理していました。でも現場では「アイテム名」しかも「アイテム名の通称」が共通言語となっているのです!

おいおいおい!話が違ーじゃねーか。あの予行練習はなんだったのよ。誰も品番で言わないじゃん (涙)。最初から教えてくれよ〜状態。

でもこれは、要領を得ないニシくんとリハーサルをしたボクの痛恨のミス。よくよく考えると品番が頭に入ってる人なんていないんだよね、だから品番で指示出しするには店頭にある商品のタグを見て指示しなきゃいけないので、かなり効率が悪い。

そこからは散々でした。

ボクは品番じゃないと商品を見分けられない、ニシくんは相変わらずドジしているみたいで、同じく本社から店頭ヘルプにきていたお局のキョウコさんから、インカムで怒号を浴びせられている。いや、浴びせられまくってる (苦笑)。

極限状態なので、なかなか普段ではお目にかかれない口調とお言葉。当然、ボクにもその様子はインカムを通してまる聞こえ。しかもストックは猛暑。地獄です。。。

一度崩れた歯車はなかなか嚙み合うことはなく、要領を得てきたのが夕方くらい。しかし、ほどなくしてこの日の営業は終了。惨敗です。

翌日ボクは、お隣の有楽町阪急に配置替え。30歳の商品名が分からないおっさんと、挙動不審でお局からすべての人格を否定された元ラッパーでは、この重責を担えないと判断したのでしょう。

おそっーーーーーー!って感じ(笑)。

有楽町阪急はお客さんも少なくユルかったのと初日の失敗をいかして、新しい相棒のサメ (=10歳下くらいの彼も新人。同じく本社からのヘルプ) と完璧な地図を作成して乗り切ることができたと思ってます 。


これがボクとプランタンの想い出の一部始終。

「30歳のおっさんが20歳の女の子に本気で舌打ちされる」そんな甘塩っぱい経験も今や良い想い出。逆にこういう経験がないとアパレルの現場を知らない薄っぺらい提案しかできないと思うので、むしろ宝物かな。

事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きているんだ!まさにまさに。

素敵な体験をありがとうプランタン、32年間お疲れ様でした!