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キーワードは関係性!脅威のキャンセル率 0.4%を実現した Warby Parker の先をいくサングラス

どうも!買い物中毒のファション通販アドバイザーの野田(@KURUZE)です。お買い物してますか?

2015年に Fast Company というアメリカのメディアが発表した「世界で最もイノベーティブな50社」というランキングにおいて AppleやGoogleを抑えて1位に躍り出た企業に「Warby Parker (ワービーパーカー) 」というメガネブランドがあります。

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この Warby Parker は、デザイナーを社内に抱え高いデザイン性を担保すると共に、製造と販売の間にいる中間業者を排除。また店舗を持たず通販のみでスタートしたこともあり店舗や販売スタッフという固定費を削ることに成功し、通常は原価の10倍くらいとなるメガネの販売価格を市場価格の1/4程度に抑えることに成功した。

他にもWarby Parker のメガネを買うと、慈善団体を通じて発展途上国に寄付されるプログラムを実施したり、オンライン販売という試着できない不安を解消するためにメガネを5本まで無料で送付し、気に入ったフレームだけを選んで残りは送り返してもらう「Home Try-on」というプログラムを実施している。

このような取り組みによってアパレルブランドの Bonobosと並び D2C ( =Direct to Consumer。自社企画・製造の商品を直接お客様に届けること。SPAとの違いは店舗を持たずに自社サイトのみで販売するビジネスモデル ※ 2018年4月現在のWarby Parker はアメリカとカナダに70店舗以上を展開 ) の代表格として、低迷するアパレル業界の救世主となるビジネスモデルと言われてきました。

 

SNSの口コミだけでサングラス500本が完売!

所変わって舞台は日本。時は2017年の12月1日。500本限定で3つのサングラスの販売が開始されました。それがこちら (=現在は販売が終了しています )。

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今や日本やシンガポール、台湾など海外10カ国に220店舗を展開し、世界的なメガネのファストファッション・ブランドとして知られるメガネ販売大手の OWNDAYS と、短パン社長こと奥ノ谷圭祐が手がける世界初の関係性ブランド Keisuke okunoya のコラボサングラスである。

価格は3つとも2万5000円前後で販売は専用サイトのみ。限定500本の受注生産でお届け予定は4月頃。なお予約数が500本に届かない場合は、生産されないという条件付きで 2017年の12月1日から10日間限定で予約が開始された。

【 予約開始時の短パン社長のブログはこちら 】

そして、ここからが「世界初の関係性ブランド」の真骨頂である。告知はすべてSNS。短パン社長と繋がるファンの人たちが次々と予約開始を告げる投稿をポストする。そして予約。さらには予約が完了するとその様子もまた投稿していく。

予約が完了すると販売サイトに表示されている残り本数のカウンターが減っていく仕組みなので、予約が完了した人は500本実現のために「あと何本!」というような投稿を立て続けにおこなう。ボクも最後の1本を手に入れるべく夜通しカウンターに目を光らせていました。

そして最終日の明け方。見事500本達成という偉業が達成されます!売上にして1200万。SNSと専用サイトのみで、2万5000円前後のサングラスが500本完売したのである。

【 その期間のTwitterの異常なまでの盛り上がりはこちらからご覧いただけます 】

 

四重苦の中でも脅威のキャンセル率 0.4%を実現!

そして4月を迎え、予約していた商品の発送を迎えることとなる。

SNSの告知だけで2万5000円前後のサングラスが試着もせずに500本売れること自体衝撃だが、通販を生業にするボクにとってさらなる衝撃はその後に訪れることになる。

このサングラスの決済方法は「代引き」と「銀行振込」の2つ。つまり後払い決済である。そして注文からお届けまで4ヶ月もの期間を要する予約注文である。さらには先ほど紹介した Warby Parker のように試着できるわけでなく、みんなぶっつけ本番で2万5000円の高額決済をしなければならない。もっと言えばメガネより需要の少ないと思われるサングラスにも関わらず、だ。

この四重苦を考えると、いくらSNSで繋がる人たちが購入の中心とはいえキャンセルや返品で5%くらいはいくんじゃないか?と思っていました。

しかし先日、短パン社長とのメッセンジャーの中でキャンセルや返品のことに話題が及ぶと

Messa

「 へ!?  2人??? 」。。。

そう、キャンセルと返品合わせても2人。オーダーは500本だが、複数購入した人もいるので購入者数でみると約420人。その中で2人です。

繰り返しになりますが

・後払い決済のみ
・お届けまで4ヶ月かかる予約注文
・試着できない
・メガネではなくサングラス

この四重苦の中で2人。つまり0.4%。ちょっと考えられない驚異的なキャンセル・返品率です。

世界で最もイノベーティブな50社のトップに輝いたこともある Warby Parker ですら、5本送って気に入ったメガネ以外は返品してもらうという無駄を許容せざるをえないビジネスモデルであるのに対して、OWNDAYS と Keisuke okunoya のコラボサングラスは試着せずとも驚異のキャンセル・返品率 0.4%である。

 

「ブランドと顧客」ではなく「友だち同士」の関係性

ではなぜ、ここまでの驚異的なキャンセル・返品率になるのか。その答えは「関係性」にあるんじゃないかなと。

Warby Parker も SNSを中心に顧客との関係性を築きあげています。むしろSNS活用の成功事例として紹介されることもよくあります。でもあくまで「ブランドと顧客」の関係性です。

一方で OWNDAYS と Keisuke okunoya のコラボサングラスは、SNSによって短パン社長と直接繋がる人たちが購入の中心。つまり「短パン社長と友だち」の関係性。

多くの人はサングラスが欲しいのではなく、短パン社長とOWNDAYSがSNS上で始めたお祭りに参加するための手段としてサングラスを買ったのであり、そこでの盛り上がりや500本達成に向けての一体感や達成感といった部分にこそ価値を感じているハズです。

そう考えると OWNDAYS の中では高額な2万5000円という価格も関係ないし、試着できなくても問題ない。なんだったら無事500本目をゲットすることができたボクは、届いてから1度もかけていません (笑)。そもそも最後の1本を買おうと決めた時点で、3タイプある中から選ぶことができないしね。

【 祝!500本達成!】OWNDAYS × Keisuke okunoya ラス1獲得リアルドキュメント! 前編

つまりお友だちという関係性で繋がる人たちが買ったものは、サングラスというモノではなく体験。だからこそ常識では考えられない脅威のキャンセル率 0.4%が実現したのだと思います。

もう1つ特筆すべきは、この手法はどこも真似できないという点にあります。例えば Warby Parker のメガネを5本まで無料で送付し、気に入ったフレームだけを選んで送り返せる「Home Try-on」という手法は、日本でもオーマイグラスが行っています。つまり一定の規模がある会社であれば実現できる再現性がある手法です。

でも OWNDAYS と Keisuke okunoya の場合、「目標本数に達しないと生産しない」という販売手法は真似できたとしても、個人と繋がるファンが存在しないことにはすべてが絵に描いたモチに終わります。つまり成功要因が個人に紐づいている分、他の人では替えがきかず再現性がかなり低い。

まさに差別化ではなく独自化。

確かに単発企画だから、という側面もあるかもしれません。でも Warby Parker のように5本送って残りは戻すという手法がベストとも思えません。

ボクたちマーケッターはオムニチャネルやD2Cなどなど、先進事例というとなにかと海外に目を向けがちですが、いやいや灯台下暗し。日本にもあるじゃん!もっと先行く事例が。